数学の命題示しました

主に組合せ論について,読んだ本で出てきたことや,考えたことを書きます.

添字の動く範囲にminが絡むある和について

以下の命題の代数的証明と組合せ論的証明を紹介する.また,組合せ論的証明に基づいてパラメータを増やす拡張を行う.

定理
自然数 n,rについて
 \displaystyle\sum_{\substack (n,n+1,\ldots,n+r-1)\geq (\ell_0,\ldots,\ell_{r-1})\geq 0\\ \min\{\ell_0,\ldots,\ell_{r-1}\}\geq c\geq 0}q^{\ell_0+\cdots+\ell_{r-1}+c}=\frac{\prod_{i=1}^{r+1}(1-q^{n+i})}{(1-q)^r(1-q^{r+1})}
が成立する.

上式左辺は,添字 \ell_{i}が動く範囲が 0\leq\ell_{i}\leq n+i\ (0\leq i\leq r-1)だということを表す.
また右辺は, q-解析の記号 \displaystyle[n]\triangleq \frac{1-q^n}{1-q}を使うと \displaystyle\frac{\prod_{i=0}^{r+1}[n+i]}{[r+1]}と書ける.

代数的証明

twitterにて証明を募集したところ,NKSさん (@nkswtr1)が教えてくれた証明を紹介する.
https://twitter.com/nkswtr1/status/1451845616653402114

この証明では,和の順番を入れ替えてまず添字 cに関しての和と見ることがポイントだったようだ.

(証明終わり)

組合せ論的証明

右辺の分母を左辺に持ってきた形
 \displaystyle[r+1]\left(\sum_{\substack (n,n+1,\ldots,n+r-1)\geq (\ell_0,\ldots,\ell_{r-1})\geq 0\\ \min\{\ell_0,\ldots,\ell_{r-1}\}\geq c\geq 0}q^{\ell_0+\cdots+\ell_{r-1}+c}\right)=\prod_{i=1}^{r+1}[n+i]
を示す.
整数の r+1個組の二つの集合を
 I\triangleq\{(\ell_0,\ldots,\ell_{r-1};c)\mid 0\leq \ell_i\leq n+i\ (0\leq i\leq r-1),\ 0\leq c\leq \min\{\ell_0,\ldots,\ell_{r-1}\}\}
 J\triangleq\{(t_0\ldots,t_{r})\mid 0\leq t_{i}\leq n+i\ (0\leq i\leq r)\}
と定義する.
式を示すには,全単射 \{0,\ldots,r\}\times I\ni (x,(\ell_0,\ldots,\ell_{r-1};c))\mapsto (t_0,\ldots,t_{r})\in J
であって,
(式1):  \displaystyle x+\sum_{i=0}^{r-1}\ell_{i}+c=\sum_{j=0}^rt_r
を満たすものを作ればよい.
全単射は次のように作る.

 (x,(\ell_0,\ldots,\ell_{r-1};c))に対して,
 (t_0,\ldots,t_r)\triangleq (\ell_0,\ldots,\ell_{r-x-1},c,\ell_{r-x}+1,\ldots,\ell_{r-1}+1)と定める.
つまり,列 (\ell_0,\ldots,\ell_{r-1})の後ろから x番目の位置に cを挿入し,それより後ろはすべて +1するということである.
この対応は全単射的である.なぜならば,できた列 (t_0,\ldots,t_r)の中で一番小さい要素のうち一番右にあるものが cとして挿入されたものだと分かるからである.
またこの対応は(式1)を満たす.
(証明終わり)

組合せ論に基づく拡張

組合せ論的証明をよく見ると追加のパラメータとして a_iを入れた次の拡張ができる.
定理
自然数 n,rについて
 \displaystyle\sum_{x=0}^r\sum_{\substack (n,n+1,\ldots,n+r-1)\geq (\ell_0,\ldots,\ell_{r-1})\geq 0\\ \min\{\ell_0,\ldots,\ell_{r-1}\}\geq c\geq 0}q^{\ell_0+\cdots+\ell_{r-1}+c+x}\left(\prod_{i=0}^{r-1}a_{\ell_i-i}\right)a_{c-r+x}
 \displaystyle=\prod_{i=0}^r\sum_{j=0}^{n+i}q^ja_{j-i}

が成立する.
この式は,全ての a_i a_i=1とすると元の式に戻る.

証明
(右辺)
 \displaystyle=\sum_{(t_0,\ldots,t_{r})\in J}q^{t_0+\cdots+t_r}\prod_{i=0}^ra_{t_i-i}
ここで全単射を使って Jから Iにうつすと
 \displaystyle=\sum_{x=0}^r\sum_{(\ell_0,\ldots,\ell_{r-1};c)\in I}q^{\ell_0+\cdots+\ell_{r-x-1}+(\ell_{r-x}+1)+\cdots+(\ell_{r-1}+1)+c}\left(\prod_{i=0}^{r-x-1}a_{\ell_i-i}\right)\left(\prod_{i=r-x+1}^{r}a_{\ell_{i-1}+1-i}\right)a_{c-(r-x)}
=(左辺)

(証明終わり)

蛇足

和の変数を増やす違う拡張もやってみました