数学の命題示しました

主に組合せ論について,読んだ本で出てきたことや,考えたことを書きます.

1円玉,5円玉,10円玉を使ってN円をぴったり支払う方法のq-母関数

非負整数の集合を \mathbb{Z}_0とかく.
1円玉,5円玉,10円玉を使って N円をぴったり支払う方法の数とは,集合
 S(N)\triangleq\{(a,b,c)\mid a+5b+10c=N,\ a,b,c\in\mathbb{Z}_0\}
の要素数である.

以前の記事
(1円玉,5円玉,10円玉を使ってN円をぴったり支払う方法の数 - 数学の命題示しました)
では,非負整数 Nが,非負整数 n r\in\{0,1,2,3,4\}を用いて
 N=10n+rとかけるとき, |S(N)|=(n+1)^2であることを示した.

本記事ではこの集合について単なる要素数より詳しい下式を証明する.

定理
 nは非負整数とし, r\in\{0,1,2,3,4\}とする.集合 S(r,n)
 S(r,n)\triangleq\{(a,b,c)\mid a+5b+10c=10n+r,\ a,b,c\in\mathbb{Z}_0\}
と定める.このとき
 \displaystyle\sum_{(a,b,c)\in S(r,n)}q^{b+c}=(1+q+\cdots+q^{n})^2
が成立する.

補足
右辺は rには依存しない.
 q\to 1とすると,以前証明した式に戻る.

証明
まず,任意の非負整数 nに対して, S(0,n) S(r,n),\ r\in\{1,2,3,4\}の間には
 S(0,n)\ni (a,b,c)\mapsto (a+r,b,c)\in S(r,n)
という全単射がとれる.
だから,証明は S(0,n)に対して行えばよい.

第一象限の点の集合
 A\triangleq \{(b,c)\mid (a,b,c)\in S(0,n)\}
 =\{(b,c)\mid a+5b+10c=10n,\ a,b,c\in\mathbb{Z}_0\}
を考える.これは
 A=\{(b,c)\mid b+2c\leq 2n,\ b,c\in\mathbb{Z}_0\}
とかける.

また,第一象限の点の集合
 B\triangleq \{0,\ldots,n\}\times\{0,\ldots,n\}
も考える.

集合 Aから集合 Bへの全単射
 A\ni(b,c)\mapsto (s,t)\in B
であって,
 b+c=s+t
を満たすものを作れば証明が完了する.
以下,そのような全単射を作る.

 n=6の例で全単射を説明する.
集合 Aと集合 Bを図示すると以下の図 (上)のようになる.

集合 Aから集合 Bへの全単射は図の (下)のように作る.
すなわち,集合 Aにおいて直線 y=d-xの上に乗っている点 (b,c)を、直線と平行に
適当な距離だけ北西へ移動させると,集合 Bに一致させることができる。
この移動によって, b+cの値は変わらない。

(証明終わり)