第一種,第二種スターリング数を対称多項式で表す
本記事の結論
時間がない人のために結論だけ書くと,以下が成立する (cf. [2]).
,
.
とはそれぞれ第一種,第二種スターリング数で,右辺は基本,完全対称式である.
このをに変えると,
標準的なスターリング数と呼ばれているものが得られる.
第一種,第二種スターリング数
定義 (第一種,第二種スターリング数)
非負整数に対して第一種スターリング数,第二種スターリング数をそれぞれ
,
を満たす実数として定義する.
スターリング数は実は非負整数になり,以下のような組合せ論的な意味をもつ.
定理1 (第一種スターリング数の組合せ論的意味づけ,cf. [1])
任意の非負整数について,第一種スターリング数は,
文字の置換のうちサイクル数であるものの個数に等しい.
定理2 (第二種スターリング数の組合せ論的意味づけ,cf. [1])
任意の非負整数について,第二種スターリング数は,
点集合の部分への分割の個数に等しい.
上記二つの性質の説明は,本ブログの記事
第一種,第二種スターリング数 - 数学の命題示しました
でも述べた.
また,スターリング数は以下の漸化式を満たすことが知られている.
定理3 (スターリング数の満たす漸化式.cf. [2])
,
,
上記の漸化式についての証明は,Wikipediaの記事が見やすいかもしれない.
基本対称式や完全対称式を使ってスターリング数を表す
基本対称式と完全対称式の定義は
色々な方法があるが,ここでは以下のように定義する.
定義 (基本対称式,完全対称式)
変数についての多項式と
とを,それぞれ以下を満たす式として定義する.
,
.
これを使って,第一種,第二種スターリング数は以下の通り表される.
定理4の証明の概略
基本対称式と完全対称式はそれぞれ,以下の漸化式を満たす.
定理5 (基本対称式,完全対称式の満たす漸化式)
,
.
この漸化式については,上は[3],下は[4]を参照せよ.
この漸化式に
を入れれば,例えばととは
定理3にある漸化式をともに満たすことが分かる.
についても同様である.