数学の命題示しました

主に組合せ論について,読んだ本で出てきたことや,考えたことを書きます.

平行六角形の内接楕円の公式

実数 a,b,c,p,q  (a\lt b\lt p),  (-c\lt q\lt c)をとり,
 (a,c),(b,c),(p,q),(-a,-c),(-b,-c),(-p,-q),(a,c)をこの順番に線分で結んでできる有界領域を「平行六角形」と呼ぶことにする.

つまり,以下の図みたいなやつのことである.
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平行六角形には上の図に赤い点線で描いたような内接楕円が存在するように見える.
ここでいう内接楕円とは,平行六角形の六辺全てに接する楕円のことをいう.
本記事ではその式を求める.




内接楕円を求める

本当に示したいのは以下のことなのだが,
予想
任意の平行六角形には内接楕円が存在する.


ここではそれより弱い次のことを示した.
命題
任意の平行六角形に対して,その六辺を延長した直線全てに接する二次曲線が存在する.
(ここでいう二次曲線は必ずしも実曲線とは限らない.)

証明
原点に関して点対称な二次曲線で,条件に合うものを探すことにする.
二次曲線 E
 E\colon(x+y\tan\theta)^2/A^2+(-x\tan\theta+y)^2/B^2=1
とおく.

 (a,c),(b,c)を通る直線は\ell_1\colon y=c,
 (b,c),(p,q)を通る直線は\ell_2\colon y-c=(q-c)(x-b)/(p-b),
 (a,c),(-p,-q)を通る直線は\ell_3\colon y-c=(-q-c)(x-a)/(-p-a)
である.

以下,二次曲線 Eが直線 \ell_1,\ell_2,\ell_3に接するように A^2,B^2,\tan\thetaを決める.

二次曲線 Eと直線 \ell_1が接するので, E,\ell_1から yを消去してできる
 x二次方程式において判別式 =0である.これを整理すると:
(式1)
 \tan^2\theta \cdot A^2+B^2-c^2(\tan^2\theta+1)^2=0
を得る.

次に Eと直線 \ell_2が接するので, yを消去して判別式 =0より
(式2)
 ((b-p)\tan\theta-c+q)^2A^2+((c-q)\tan\theta+b-p)^2B^2-(\tan^2\theta+1)^2(bq-cp)^2=0
を得る.

また Eと直線 \ell_3が接するので, yを消去して判別式 =0より
(式3)
 ((p+a)\tan\theta-c-q)^2A^2+((q+c)\tan\theta+a+p)^2B^2-(\tan^2\theta+1)^2(aq-cp)^2=0
を得る.

(式1)と(式2)を連立すると,以下の通り A^2,B^2 \tan\thetaで表す式が得られる.
(式4)
 A^2=(c(c-q)\tan\theta+bc-2pc+bq)(\tan^2\theta+1)(c\tan\theta+b)
   \div((c-q)\tan^2\theta+2(b-p)\tan\theta-(c-q) ) ,
(式5)
 B^2=( (bc-2pc+bq)\tan\theta-c(c-q) ) (\tan^2\theta+1)(b\tan\theta-c)
   \div( (c-q)\tan^2\theta+2(b-p)\tan\theta-(c-q) ).


また(式1)と(式3)を連立すると,同じく A^2,B^2 \tan\thetaで表す式が得られる.
(式6)
 A^2=(c(c+q)\tan\theta+ac+2pc-aq)(tan^2\theta+1)(c\tan\theta+a)
   \div( (c+q)\tan^2\theta+2(a+p)\tan\theta-c(c+q) ),
(式7)
 B^2=((ac+2pc-aq)\tan\theta-c(c+q) )(tan^2\theta+1)(b\tan\theta-c)
   \div( (c+q)\tan^2\theta+2(a+p)\tan\theta-c(c+q) ).


二次曲線が存在するためには,(式4),(式5),(式6),(式7)を同時に満たす \tan\thetaが存在しなければならない.
それは実際存在することが以下のように分かる.
(式4)と(式6)より, A^2を消去して \tan\thetaの方程式として解くと
 S\triangleq ac-aq+bc+bq\neq 0, (これは最初の条件より成立する)
 T\triangleq -ab+ap-bp+c^2とすると
 \tan\theta=\pm i, (T\pm\sqrt{T^2+S^2})/S
を得る.

また,(式5)と(式7)からは
 \tan\theta=0,\pm i, (T\pm\sqrt{T^2+S^2})/S
が得られる.

結局, \tan\thetaが実数になる
 \tan\theta = (T\pm\sqrt{T^2+S^2})/S
の方をとればよい.

(証明終わり.)

楕円の存在を言うためにはこの \tan\thetaをとったときに A^2,B^2が正になることを確かめないといけないのだが,少し考えたがよく分からなかったので示せていない.
 a,b,c,p,qを最初の条件の通り与えれば,楕円以外の双曲線になることはない気がしているのだが.
そう思う根拠は,平行六角形を図形的に見ると,六辺に接するように円錐曲線 (楕円,放物線,双曲線)を引く方法は楕円にするしかない気がするから.

上記の証明中で \tan\theta \pmの二つ出てきたが,これらの二つはどちらも同じ楕円を与えるような気がしていて,
内接楕円の唯一性も言える気がしている.

内接楕円の公式

分かったことを公式として書いておこうと思う.


内接楕円の公式

実数 a,b,c,p,q  (a\lt b\lt p),  (-c\lt q\lt c)が与えられているとする.
 (a,c),(b,c),(p,q),(-a,-c),(-b,-c),(-p,-q)を時計回りにこの順に頂点として持つ平行六角形の内接楕円は

 S\triangleq ac-aq+bc+bq,
 T\triangleq -ab+ap-bp+c^2,
 \tan\theta \triangleq (T\pm\sqrt{T^2+S^2})/S,
 A^2\triangleq(c(c-q)\tan\theta+bc-2pc+bq)(\tan^2\theta+1)(c\tan\theta+b)
   \div((c-q)\tan^2\theta+2(b-p)\tan\theta-(c-q) ),
 B^2\triangleq( (bc-2pc+bq)\tan\theta-c(c-q) ) (\tan^2\theta+1)(b\tan\theta-c)
   \div( (c-q)\tan^2\theta+2(b-p)\tan\theta-(c-q) )
により

 E\colon(x+y\tan\theta)^2/A^2+(-x\tan\theta+y)^2/B^2=1
と書かれる.(と思う.もしかしたら楕円にならないかもしれないので.)



図示

作った楕円を図示してみる.
 (a,b,c,p,q)\triangleq(-4,4,3,7,-1)
ととる.すると平行六角形と楕円は以下のようになる.
直線どうしの交点 (の一部)が平行六角形の頂点を表している.
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平行六角形にならないような点のとり方をした場合

本記事では最初から平行六角形ができるように (a,b,c,d,q)に条件をつけて考えたが,
この条件を外しても,上で求めた曲線は意味を持つ.
それについて図示してみると,双曲線とかになるっぽかった.(下図)
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図形的に気になったこと

(式1),(式2),(式3)は三平方の定理の形をしている.
何かしら図形的な解釈によってこの式を導くことができるのかもしれない.