置換のMajor indexと転倒数の等分布性
major indexとは置換の統計量つまり,対称群から非負整数への写像の一種である.
major indexは,以前このブログでも紹介した「置換の転倒数」と等分布であることが知られている.
つまり,以下の母関数の式が成立する.(式 (1)とする.)
.
(参考:R. P. Stanley, Enumerative combinatorics, vol. 1, second edition, p. 41, 2011)
本記事では式 (1)を証明する.
証明はD. Foataによる,重みを保つ全単射を構成する方法が有名だが,今回は転倒数との関連は考えず直接証明してみる.
(参考:D. Foata, On the Netto Inversion Number of a Sequence, Proceedings of the American
Mathematical Society 19, pp. 236-240, 1968.)
定義 (減少集合,major index)
置換に対して,その減少集合を
と定める.
置換のmajor indexを,
と定める.
例
置換をとかく.
に対して,
である.
major indexと転倒数の等分布性
式 (1)を証明する.
まず,major indexに関する情報を保ちつつ置換を置換に写す全単射を構成する.この全単射は式 (1)の証明の核心となる.
命題
のとき,全単射
が存在して,
を満たす.
証明
置換の行列表記を用いる.
ここでいう置換の行列表記とは,のとき,そうでないときによって行列を定義し,そのような行列で置換を表すことである.
行列の一番下の行をとり,一番上の行の上に乗せる写像をと定義する.
つまり,下図のように定義する.
この写像は明らかに可逆である.
また,この写像を当てたあとは,当てる前よりmajor indexが1増える.
なぜなら,なるが唯一つ存在し,となるが,
- ならば,であり,が成立する.
- ならば,であり,が成立する.
よって,いずれの場合でもmajor indexが1増えるのである.
(証明終わり.)
命題
母関数の式 (1)が成立する.
式 (1)の再掲:
.
証明
置換に対して,置換を,行列表記を用いて
と定める.このときである.
集合を
と定める.
すると集合の等式
が成立する.(写像は全単射なので,右辺の和は非交差である.)
以下,式 (1)をに関する帰納法で示す.上で示した集合の式から,
しかしであったから,
帰納法の仮定から
(証明終わり.)