数学の命題示しました

主に組合せ論について,読んだ本で出てきたことや,考えたことを書きます.

置換の符号の一般化が無理だった話

置換の符号とは,対称群 S_nから S_2=\{+1,-1\}への唯一の非自明な準同型で {\rm sign}とかきます.
この置換の符号を使って,例えば行列式などが
 \displaystyle\det A = \sum_{\sigma\in S_n}{\rm sign}(\sigma)A_{1,\sigma(1)}\cdots A_{n,\sigma(n)}
などと定義できるのでした.

ここで,符号の値域を S_2ではなく, S_3にすると,置換の符号を精密化した「一般化符号」ができて面白いんじゃないかと思いました.
ここでは,次のような写像 f\colon S_n\to S_3を「一般化符号」と呼ぶことにしました.

  •  fは準同型である
  •  \forall \sigma\in S_3に対し |f^{-1}(\sigma)|=n!/6である.
  •  \forall\sigma\in S_nに対し {\rm sign}(\sigma)={\rm sign}(f(\sigma))である.

結論から言うと,そのような準同型 f n\geq 5のとき存在しませんでした.

命題  n\geq 5のとき,そのような写像 fは存在しない.
証明:
 n\geq 5のとき, S_n正規部分群 \{{\rm id}\},A_n,S_nだけである.(知りませんでした...)
group theory - Proving that $A_n$ is the only proper nontrivial normal subgroup of $S_n$, $n\geq 5$ - Mathematics Stack Exchange
準同型の核は正規部分群なので, |{\rm Ker}\ f|=1,n!/2,n!である.
 n!/6にはならないので,終了.
(証明終わり)

今後は,準同型であるという条件を外して,他の意味で良さそうな「一般化符号」がないか考えてみようと思います.