数学の命題示しました

主に組合せ論について,読んだ本で出てきたことや,考えたことを書きます.

菱形タイル張り その1

上向きの正三角形△と下向きの正三角形▽をつなぎ合わせて作る,下図の赤い部分で表される領域を考える.
f:id:iwalion:20210316202632p:plain:h300
この領域は,
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△
▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽
みたいなやつを縦に積み重ねたものである.そこで,「底辺」に含まれる下向き三角形▽の数を n,積み重ねた段の数を cとして,
この領域を R(n,c)と書くことにする.
図の領域は R(7,4)である.

これから領域 R(n,c)の菱形タイル張りの方法の数を考える.
菱形タイル張りとは,単位正三角形2つを辺でつなぎ合わせて作る「菱形のタイル」で領域を埋め尽くすことである.
例えば,次の図は R(7,4)の菱形タイル張りの例である.
f:id:iwalion:20210316202749p:plain:h300

上の例は,タイルのやや特殊な貼り方に見えるが,実はそうではない.領域 R(n,c)には,上図のような貼り方しかないというのが今日示すことである.

命題

領域 R(n,c)を菱形タイル張りする方法の数は, n^c通りである.

これを示すために,2つの補題を示す.

補題

領域 R(n,c)の菱形タイル張りにおいて,「層と層にまたがる位置」に,縦向きの菱形を置くことはできない.

つまり言いたいことは,下図の状況がありえないということである.
f:id:iwalion:20210316202821p:plain:h300

補題1の証明

領域 R(n,c)を菱形タイルで埋め尽くしたとき,「層と層にまたがる位置」に,縦向きの菱形があったとする.
そのような縦向きの菱形のうち,一番下にあるものを Hとする.

 Hの四辺のうち,右下の辺を v_1とする.辺 v_1に接している Hでない方の菱形を H^{(右)}_1とし,辺 v_1の対辺を v_2とする.
同様にして辺 v_{i+1}に接して置かれている H^{(右)}_{i}でない方の菱形を H^{(右)}_{i+1}とし,辺 v_{i+1}の対辺を v_{i+2}とすることを繰り返すと,ある辺 v_{I}は領域 R(n,c)の境界の一部となる.
また, Hは一番下にあるということから,その辺 v_{I}は,菱形 H^{(右)}_{1}と同じ「層」にある事がわかる.

例えば,次の図のようになるわけである.
f:id:iwalion:20210316202844p:plain:h300


これを,菱形 Hの左側に対しても行うと,領域 R(n,c)を二つの部分に分断する菱形の列が現れる.
例えば,下図のような感じである.この列において H以外の菱形は,ある「層」に完全に含まれることに注意せよ.

f:id:iwalion:20210316202933p:plain:h300

領域 R(n,c)が菱形タイル張りできるためには,二つに分断された「上側」と「下側」がそれぞれ菱形タイル張りできる必要があるが,
例えば「下側」の領域は上図でもわかる通り,上向きの三角形△の数と下向きの三角形▽の数が1だけ違うので,菱形タイル張りすることは不可能である.
(証明終わり.)

補題

領域 R(n,1)を菱形タイル張りする方法は, n通りである.

補題2の証明

縦向きの菱形をどこに置くか ( n通りの置き方がある)だけで残りの菱形の置き方が全て決まるので, n通りである.
(証明終わり)

命題の証明

補題1より,層と層にまたがる菱形は置けないので,それぞれの「層」ごとに菱形の置き方を独立に考えればよい,
よって,
 (R(n,c)のタイル張りの数)=(R(n,1)のタイル張りの数)^ c = n^c
(証明終わり.)