有限を数えるときも無限を経由できる場合があるという話
高校数学における場合の数や数列で練習を積んだおかげで、皆さんは有限個の何かを足し合わせることには慣れていると思います。
ところで、有限和を計算する場合はふつう有限の世界だけでの計算をする気がします。
有限のものを数える場合に、「有限=無限ー無限」の形にすることで無限の世界を経由できるんじゃないかなって思って少し考えてみました。
等比数列の和
まず等比数列の和を考えてみます。高校で習うように
・・・(1)
です。
この式の証明は例えば、とおいて、両辺にをかけて
とし、との差を考えると
となる、としてできます。
また、なら、の極限を取ると幾何級数
になるのでした。
ここで一旦上述の流れを忘れて、というのは、無限級数
を表す記号だと思うことにします。
冒頭の(1)式を眺めると、右辺は
とかけます。最初の部分は
であり、残りの部分は
なので、その差は
になります。
これは、(1)式の別視点からの説明になってるんじゃんないかな、って思います。
組合せ的なものを使った説明 「無限を経由」の意味
上の話を言い換えるために次のような問題を考えてみます。
からまでの番号が書かれた箱があり、そのうちの一つの箱に玉を入れます。
すべての入れ方についてを足し合わせてください。
例えばだと、
○□□□→
□○□□→
□□○□→
□□□○→
の四通りなので、答えはです。
このように、すべての場合にわたって何かを足し合わせた式を母関数というらしいです。
この問題を考える際に、上のように直接考えてもいいですが、以下のように「無限を経由して」考えることもできます。
まず、箱が個のときの求める和をとしておきます。
箱の数が無限大だとした場合の、の和を二通りの方法で表します。
第一の表し方:
箱0に入れる場合、箱1に入れる場合、・・・と無限に続くのでの和は
です。
第二の表し方:
玉がどこに入るかで二つに場合分けします。
玉がからまでの箱に入る場合、和はです。
玉が以降の箱に入る場合、和は
です。
だから、箱の数が無限大だとした場合の、の和は
です。
以上からであり、です。
もうすこし複雑な問題
以下の問題を考えます。
からまでの番号が書かれた箱があり、そこに赤い玉と青い玉を入れます。ただし、
- 同じ箱には玉は一つしか入りません。
- 赤い玉は青い玉より小さい番号の箱に入れます。
すべての入れ方についてを足し合わせてください。
例えばだと、
赤青□□→
赤□青□→
赤□□青→
□赤青□→
□赤□青→
□□赤青→
の6通りを考えれば良いので、求める式は
です。
まず普通の数え方で解いてみます。青玉が入る場所はからであり、
赤玉が入りうる場所はから青玉の入る場所までなので、和は
です。
これを計算すると、
です。
は?って感じに見えますけど、例えばとかして実際計算してみると、ちゃんと
になります。
次に、無限を経由してやってみようと思います。
次のような、成分にが書いてある表を考えてみます。
例えばの場合に計算すべきものは、上の表において色がつけてある部分の和です。
この和をとしておきます。
以下の緑色がつけられた部分(右側に無限に続いている)の和を二通りの方法で表してみようと思います。
1つ目の方法:
表において傾き1の線上に乗っている部分を纏めて計算します。
2つ目の方法:
部分を二つに分けます。一つは和がになる、最初の絵で示した薄い肌色の部分。
もう一つは以下の部分です。
つまり図でいうと以下のような感じに分けます。
以外の部分の和は
よって、全体の和は
です。
以上から
がわかります。
上で普通に求めたと見た目は違いますが、計算すると一緒です。
逆に言えば、今やった計算は
の証明になっています。
これを証明して何の意味があるのかは、知りません。
結局無限を経由することに何の利点があるのか
記事を書いてはみたものの、これが説明できないことが、今けっこう辛いところです。
有限和を直接は計算しにくいけど、無限ー無限の形にできて無限のほうは比較的簡単に求められるような例を今探しています。